4月19日(水)雨時々曇りのち晴れ
港の方向にかかっていた雨雲がみるみる近づいてきた。
ホテルの窓から見ている景色は、まるで如雨露で水を撒いているかのごとく、通りの向こう側から雨がやってきて、アッという間に窓も濡らしていったと表現すれば判って頂けるだろうか。
折角宮ちゃんが張り切っていたのに、この雨ではゴルフは無理。しばらく様子を見ることにして、時間を有効に使うべく、この旅最後のお洗濯をすることにした。
2階にゲスト用のランドリーがあるので、大きな袋にいっぱい洗濯物を入れてエレベーターに乗り込むと、親子3人連れが先客としていた。
しっかりとお化粧したお母さんが、洗濯物をいっぱい抱えた私を訝しげに見、「このエレベーターはゲスト用でしょう?」とお父さんに言っている。お父さんは「彼女もゲストじゃないの?ランドリーに行くんだよ」と答えていた。どうやら私はホテルで働く、東洋の女と思われたようだ。
確かに、Tシャツ、短パン、サンダル履きの姿だ。でも、あんただって短パンにサンダル履きじゃん!失礼なヤツ!いくら私でもあのくらいの英語は解る。東洋人をなめんなよ。
プンプンしながら洗濯機に洗濯物を入れ、9階の部屋に戻るためもう一度エレベーターに乗り9階の所を押した後、今度は初老の男性が乗ってきた。
「何階ですか?」質問しても様子が変。ひょっとして、「下に行きたかったのですか?」と聞くと、「あなたが降りてから下に行くボタンを押すから大丈夫だよ。心配してくれてありがとうね。」ニコニコしながらそう言ってくれた。
母国語が英語圏の人ではなさそうだけど、何て優しげな笑顔なんだろう。旅行者同士、気持ちよく過ごすように配慮する、こういう感じの良い方が断然多いのだ。
さっきの女、どこの国のモンだ!ざーけんな。

さて、私達の部屋は9階にあるが、実際は11階になる。1階をGround 2階を Mezzanineと数え、3階から1階となるのだ。オーストラリアは色々なところで英国式表現が使われている。
エレベーターはリフト、フレンチフライはチップス、一流ホテルではハイティーが楽しめるようだ。
また、オーストラリア独特の発音や言葉も、英語力が乏しい私の悩みの種だ。
オージーは親しい友人に「G'day mate」と呼びかける。「グダイマイト」だ。調子はどう?みたいな意味らしい。Day はダイ、Nameはナム、「ホリダイ?」と聞かれた時は何のことかわからなかった。そう、ホリデイ?と聞かれたんですね。
友人への挨拶としてはHow ya goin' inv?なーんて言うこともあるらしい。シドニー在中のとりちゃんの従姉も、西オーストラリアあたりは訛があるから大変だったでしょう?と言っていたが本当に大変だった。
オージーはアメリカとかに旅行に行って困ることはないのかな? 素朴な疑問です。

雨は昼近くになっても降ったり止んだりという状態。ゴルフは明日に変更し、今日は市内見学をすることにした。
タウンホールまで歩いていくと、路上は紙テープで足の踏み場もないくらい。清掃車が出ていて、皆さん、せっせとお掃除している。
タウンホールの階段には、赤い絨毯が敷き詰めてあった。後で知ったことだが、US NAVYが入港した式典があったらしい。もうちょっと早く出掛けていれば見られたのに、残念。




QVB(クイーン.ビクトリア.ビルディング)でからくり時計を見てマーチンプレースにたどり着く頃に、また雨がザッと降ってきた。
古いビクトリア式ビルの上に、オープンカフェのパラソルに、石畳の上に雨が降る。都会の雨は美しい。雨宿りも何だか絵になる。
小雨になったところで、坂の多いシドニーの町を、また歩き出す。







ロックス、ここはイギリスから連れてこられた流刑囚が、堅い岩盤を砕いて築き上げた町だそうだ。
一度は荒れ果てて、誰も見向きもしなくなったらしいが、古い倉庫が今ではお洒落なカフェや、ブティック、スーベニアショップになっている。
港に続く階段を下りると、三角錐のオブジェがあった。一面は、開拓当時囚人を仕切っていた総督のシルエット。もう一面は、足かせを付けられた囚人のシルエットで、足かせだけはシルエットでなく本物だ。
海に面したもう一面は、家族のシルエット。作り手の考えが分かり易いオブジェだよね。
 さて、階段を下りきると昔ながらの建物の1階をオープンスペースにしたステキなカフェがあった。
シドニーの町中もそうだったけど、港は特に改装中の建物が多い。オリンピックに向けてあっちこっち、お化粧直し中なのだろう。
カフェの入っている建物も骨組みを沢山組んで、お化粧というよりも大規模な改装の最中だった。雨上がりの空に架かった小さな虹を見ながら、歩いてサーキュラキーにたどり着く。



シドニーでもベイエリアは人気のスポットだ。お洒落なお店がたくさんあって、企業の進出に伴って地価はどえらく値上がりし、サーキュラキーは一般人が住める所では無くなってしまったそうだ。
でも、町中から歩いてこられる距離だし、場所がいいからと言って、ベラボーな料金を取って大して旨くもない料理を出す店もない。
お台場あたりより遙かに交通の便もよく、ずっとおしゃれで良心的じゃない? 我々もパラソルの下の席に腰掛け、渇いた喉をビールで潤していると、ディナークルーズ用の豪華クルザーが港を出て行く。
ハーバーブリッジは夕日に輝き、海も風も穏やかだ。幸せだな。何だか、しみじみとそう思った。

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