4月18日(火)曇りのち雨、時々晴れ
その痛みは突然やって来た。
お腹が痛い、何時だろう?机の上に時計が置いてあったが強い近視の私にはとても見えない。
何とか起きあがりトイレにたどり着いた頃には、手足が痺れ、吐き気までしていた。
どの位時間がたったのか、床が汗で濡れるほど苦しんで、ようやく少し落ち着いてからベッドに戻る。
全身汗びっしょりだが、着替える元気もない。何か悪いものでも食べたかな?何が原因なんだろう。ボーとする頭で考えていると、隣のベッドの宮ちゃんが起きあがった。
声を掛けたいが、まだお腹に力が入らない。まさか宮ちゃんも具合が悪い?心配しているとキッチンの方向からプシュッとカンを開ける音がする。のどが渇いただけのようだ。私だけお腹が痛いのなら、食中毒ではないだろう。11日間の疲れが出たのかしら。
この旅に出るために2週間お休みを取らずにいたし、ホテルに入ってホッとしたとたん、ドッと疲れが来てもおかしくはない。
部屋に戻ってきた宮ちゃんに薬をもらい、何度か寝返りをうつ内に眠ってしまった。
目覚めは最低、胃が重い。モゾモゾ起き出してリビングに行きソファに倒れ込むと、隣の部屋のとりちゃんも起きてきた。彼も何だか顔色がよくない。
後で聞いた話だが、朝、胃が痛くて目が覚めたそうだ。
このホテルのお風呂は浅いけどバスタブがあるので、お湯をためて体を温める事が出来た。
どこの国で、何を食べても問題のない私だが、お風呂だけは日本式が1番。誰が何と言ったってこれだけは譲れない。
固まっていた体がゆっくりとほぐれていくのを感じながら、この時ばかりは自宅のお風呂が恋しかった。
お風呂効果はテキメンで、だいぶ体が楽になったようだ。

シドニーには横浜の中華街ほどの規模ではないが、チャイナタウンがあり、安くて旨い店が多いそうだ。
特にランチタイム限定の飲茶が超お薦めと聞いており、私も日本を出る前から楽しみにしていた。それまでに、この胃袋を何とかしなくっちゃ。
昼過ぎまで部家でのんびりと過ごし、元気を出してチャイナタウンに向かった。
とりちゃんの8年前の記憶を頼りに、通りを歩いてゆく。
バックパッカー用ホテルや1泊35$程の安ホテルが並んでいる。
「8年前、シドニーに来て初めて泊まったホテルですよ。」立ち止まって、とりちゃんが指さしたのはCBホテルだった。500室もあるらしいが、それ程大きく見えない。まだ20代だったとりちゃんは、これからの1年間に期待と不安でいっぱいになって、このホテルを訪れたんだろう。
実はその頃、とりちゃんの従姉もシドニーに居たらしいが、話を聞くと従姉に頼ることなく貴重な1年間を過ごしたらしい。(異国に住むには、その位の覚悟は必要なのだろう)
そして、とりちゃんの従姉は現在オーストラリア国籍の男性と結婚して、今もシドニーに住んでいる。今夜お逢いするお約束になっているが、どんな方だろうか。楽しみだ。
お薦めに店は、中華街独特の門を潜ってすぐ右手の所にあった。
湯気の上がる蒸籠を持って、ウエイトレスさん達が各テーブルを廻ってくる。中身を見せてもらって気に入ればもらう、本格的な飲茶だ。

さっそく、2〜3品選んで頬張ると、皮はムチムチ、餡はプリプリ超旨い。
どれも日本で食べる餃子類より2回りほど大きく、数も多い。海鮮類を中心に、胃が痛いこともとりあえず忘れて、8品ほど制覇しただろうか。
お腹がいっぱいになって(早く席を立ちたいくらい)体調が良ければもっと食べられたのに、とブツブツ言いながらも店を出た。
支払ったお金は全部で57$、1人1、250円位、安い、早い、旨いでした。
飲茶は地元の中国人の方々ももちろん来ているが、オージーにも人気のようだ。
老いも若きも、男も女も、昼間からワインをガンガン飲んで、バンバン注文して食べている。
うっとり見とれるほどの、喰いぷっり、飲みっぷりだ。さすがによく食べて、よく飲むオージー達だから、体格の良い人が多いのも確か。
オージーに紛れると、私の横幅は全然目立たない。お腹がぽっこりのお姉さんも、平気でへそ出しのチビTシャツ着ているし、それを笑ったり、からかう人もいないんだ。
みんなデブだから、少しくらい体重が増えても目立たないし、まっ、いっかと思う自分自身の心の油断は帰国が近づくに連れ感じているが、子供の頃から食べ物を粗末にするな、と教えられてきた私としては残すのが忍びない。
そんな心の葛藤のせいか、どうしても中国茶が欲しくなってマーケットに立ち寄った。
中華街の中のマーケットは中国の食材は当然として、日本の食材も驚くほど豊富に置いてあり、ワーキングホリデーの若者達の食生活を支えているようだ。
パースではどこを探しても、キューピーマヨネーズは見つからなかった。今回の旅も、シドニーから出発していれば食生活はもっと豊かになっていたに違いない。
魚の種類も鮮度も大変良く、シマアジの安いこと!オーストラリア名物のフッシュ&チップスもシマアジで作ってあることが多いようだ。
ダイナミックなのは豚肉で、内臓を抜いた豚の下半身がそのまま天井から吊されている。(ショウケースの中には、スライスした肉もちゃんと売っていますのでご安心あれ)
私は、茉莉茶、菊花茶各1箱3.15$をGetして満足、満足。

夜9時にとりちゃんの従姉と待ち合わせしたのは、ダーリングハーバーのカジノだった。カジノに行くのは生まれて初めて、ちょっと気後れしながらエレベーターを上がると、ドアも仕切りも何も無く、突然カジノとなる。
え、考えていたのと違うな 、これじゃパチンコ屋さんみたいじゃん。ズラーと並ぶスロットマシンは圧巻、5¢、10¢とか、掛け金が違うマシンが理路整然と並び、ゲームに熱中している人々はラフな服装の人も多い。
24時間営業だそうだが、ゲームが24時間ならお金を下ろすのも24時間で、1階にあるATMの前にも絶えず人が居て、現金を下ろしてまたギャンブルに走っていく。
私達は結局体験しなかったが、従姉ご夫妻とラウンジでお話している間も、時折、大変盛り上がっているらしい大声がしていた。
一攫千金を夢見るのは万国共通だけど、皆さん、明日のお仕事は大丈夫ですか?朝起きるのが辛いですよ。大きなお世話だが、一言、言ってやりたかった。
12時過ぎにお別れを告げ、タクシーにてホテルに戻る。
とりちゃんの従姉は、とてもしっかりした印象だが気さくな方で、ご主人も物静かなのにお話しがユーモアたっぷりの、大変素晴らしいご夫婦でした。色々気を遣って頂き、有り難うございました。
明日は、宮ちゃん待望のゴルフの予定。平日25$の気易さから私も一緒に行くことにしたけど、どんなことになりますやら、気が重い。ああ、情けない。


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